受験者(41):男性 ← BACK   NEXT →

指定時間通り午後2時に受付けを終え、待合室で他の人たちが勉強しているのを横目で眺めながら「何をいまさら往生際悪く勉強などするまい」とうそぶきつつ、ひたすらリラックスに努め、待つこと25分ぐらい。
 ようやく呼ばれて4人一組で引率者に面接室の前まで案内されてくる。私が4人のうちの先頭のようだ。私たちの面接室から1人の受験生が出てきた。大学生ぐらいの年齢の若い女性。なんとブルージーンズをはいたカジュアルな服装だ。「この人、ハローの人じゃないな」と思った。ハローのメルマガか何かに「ネクタイとスーツにせよ」と書いてあったので、私は一応それらしい格好をして行っていたが、「ひょっとしてカジュアルな服装でも合否に影響しないのかもしれないなあ」などと思っていると、面接室から若い男性が出てきて私の名前が呼ばれた。ありゃ、自分の番だ。さっきのブルージーンズは前の組の最後の受験生だったんだ。てっきり前の組はまだ1、2人残っているだろうと思っていたので慌てた。慌てたがしかしへんに間があいてドキドキがつのることもなく、突然だったのでかえってよかったかもしれない。
 入室。小さな部屋。正面の長机の真ん中にネイティヴの女性(A)。左に中年の日本人女性(B)。右に先程顔を出した背広姿の若い日本人男性(C)。Cとは入退室時の挨拶の時にちょっと視線を向けた程度であとはまったくと言っていいほど視線を合わさなかった。あとで考えればよくなかったなとは思うが、あの場ではCに注意を向けているような心のゆとりはなかった。
 Cは別にして、AとBはにこやかな雰囲気だ。

Good afternoon.

A&B: Good afternoon. (やはり自分の気持ちがCに向いていないので、この時Cが言葉を発していたのかどうか不明)

 正面の長机と対峙するように入室した私の目前左に同じ長机があり、椅子が2つ置いてある。これがハローのホームページの2次試験報告書に書いてあった例の鞄置き用の椅子だなと思い、とりあえず2脚置いてあるうちの左の方の椅子に鞄を置いて、

May I put my bag here?
 と、Bが困惑した顔で、(子音が弱く、聞き取りにくかったが)

B: That's for you to sit ...

 という意味のようなことを言ったと思う。で、私は鞄を右の椅子の上に置きなおし、私自身は左側の椅子に座った。
 思えば、汚い使い古した黒のリュックで、もうちょっとマシなのにすべきだったかもしれないと翌日反省した。

 あらためて面接官の方を見て、
Good afternoon.

 ハローのメルマガに書いてあった「大きな声で話すこと」というのは、待合室で自分に言い聞かせていたはずだが、面接室に入った途端、そんなことはどこかへ飛んでしまっていた。無意識に部屋の大きさに合わせた程度の音量になってしまっている。

A&B: Good afternoon.

B: Please relax. (laughter)

 実ににこやかな笑顔でこう言ってもらえて本当にうれしかった。ありがたい。ずいぶん気持ちが楽になる。

I'm upset. (laughter)
(この台詞はあらかじめ狙っていた。狙い通りAとBから笑いがでた。)

A&B: (laughter)

B: Everyone is like ... so ..
(やはり子音が弱い。笑顔は非常にありがたいのだが、はっきり聞き取れない。「みんなそうなんだから、リラックスして」みたいなことを言っていたはず)

Thank you.

B: Smile, please. (laughter)
(「はっはっは」というような笑いではなく、「フフフフ」というような、こちらの気持ちを和ませてくれる柔らかな気持ちのいい笑いです)
May I have your name, first?

My name is ○○○ □□□□. ○○○ is my family name.

B: And where are you from?

(一瞬、I am from で始めるべきかなと思ったが、口から出たのは)
Uh ... I live in Akashi, which is south of Kobe. (今から思えば south of Kobe は瀬戸内海だ。明石は海の中か?! west of Kobe と言うべきだった。さらに言えば Akashi だけではなく Akashi city in Hyogo prefecture と言うべきだったと思うが、この時はまったく気づかなかった。「おっ、スラスラ言えてるぞ。調子いいぞ」と思っていた。)

B: It ... (不明) ... to come here.
(「遠い」か「時間がかかる」とか言っていたはず)

Yes, it took two hours to ... ( come here と続けようとしたが)

B: I see. Well ... now let's begin.
(そうか。ここから始まるのか、ここまでは icebreaker だったのかと思う間もなく、質問者がBからAに変わる。かなり早口というか、ごく普通の native speaker のスピードだ。聞き取りにくそう。大丈夫かな。どうやらイギリス英語のようだ。やったー。ラッキー。私、イギリス英語大好き人間なのです。)

A: If I was staying in Akashi, what should I buy as a souvenir? (「明石は何が有名か」ぐらいの質問を予想していたので一瞬戸惑ったが、これはもう「明石焼き」しかないと思い)

Uh, tako-yaki, maybe, which is a kind of dumpling, or grilled dumpling, and it is named "Akashi-yaki" in Akashi. (AもBも「それで?」という顔をしているし、たこ焼きの具を説明しなければと思い、) Uh ... you put batter and octopus and ... well ... (何か忘れていると思いつつ、この時は思い出せず、あとで『300選』を思い返すと green onion だったが、この時は自分の子ども時分の経験で言えばキャベツが入っていたぞと思って) Chinese cabbages, I think, (翌日よくよく思い返せば Chinese cabbage は白菜だ!何を血迷ったのか。単純に cabbage でよかったのに!あちゃー) and grilled it (過去形は文法ミス。でも気づいたのは試験終了後。) in ... on a (an と言うべきだった) iron plate and (そうそう『300選』にあったぞと思いつつ) eat it with a thick sauce. ( あとで思えば、明石焼きは本当はソースじゃなくて、だし汁で食べるのだが、いつの間にかタコ焼きの説明に終始していた。でもその時はそんなこと気づかず、「やったーっ!うまいこと言えた!」と上々の気分であった。)

A: I see. Is this something that you like?

Yeah. (ああ、言ってしまった! 「Yes と言うべきだ、Yeah など使うな」とハローのホームページのどこかに書いてあったのに。しまった!と思ってももう遅い。気のせいか、AとBに一瞬沈黙が訪れたような…。でもほんの一瞬だ。気にするなと自分に言い聞かせる)

A: Yes. OK. Is this, uh, particular to Akashi?

Well, (laughter) I think so. It is named Akashi-yaki, so ... (あとは笑いでごまかしつつ)

A: I see. (軽くlaughter) Uh-huh. And, uh, could you please explain to me about gagaku? (雅楽?!ギョエ!まさか。)

Gagaku ... well ... ( この間3秒ほどだが、このわずかの間に頭の中で様々な思いが渦巻いた。そんなん出すなよ!昨日の新聞に歌舞伎が UNESCO の a Mastery of the Oral and Intangible Heritage of Humanity に選ばれたいうて出てたやん。そっち出してよ。何で雅楽みたいなマイナーなもん出すねん。ああ、雅楽も『300選』にあったのに、こんなん出えへんやろと思ってほとんど読み飛ばしていた。隅から隅までやっとくべきやったと思っていると、頭のどこかで court music という言葉を思い出した。ええい、ままよ!取りあえず喋り始めよう。笑顔を崩さないようにしつつ、) ... it's a tra, traditional Japanese court music. Uh, it's played by the flute, ... (by はまずいなあと思いなおして) ... uh, it is consisted of flute player (余計まずいよ。やっぱりいざとなるとミスるものです。It consists of か It is composed of とすべきでした。おまけに flute player に冠詞が抜けてます。でもどちらのミスもあとで思い返して気づいたもの。この時点では幸せにも気づいておりませんでした。それより笛のほかに何があったかな。鼓とかかな…とかそっちの方に気が行っていました) and some kinds of "taiko" drums player, (やはりあとで思い返せば players とは言えていなかった。笙とかドラみたいなのとか、やはりこの時は思いつきもせず) ... I think. (何か他に楽器があったような気がしつつ、自信がなくなっていく。やたら I think が口をついて出てます。) ... and maybe (ますます自信がない) it is played only in the court room or Imperial family or some imperial events, I think. (court room はいいとして、あとの2つは前置詞が in のままではまずいだろうな、どうもつながってないな。imperial events って何を表してんねんと自分で突っ込みをいれながら、どうにもうまい表現を思いつかず、取りあえず一連の発言は収束に向かいます。)

A: I see. (あとで思い返せば、Aの表情はあまり心から納得したような表情ではなかったと思うけど、その時はまあなんとか3秒以上の沈黙もなくそれなりの長さの文をしゃべり終えたという満足感しか私にはなかった)

Thank you. Uh, I have a question about the military forces going to Iraq. (ええ?嘘ぉ!それ去年も出したやん。そんな古いニュース、話題にせんとってえな。) Do you think it's a good idea that Japan sent ... (2、3秒言葉を選んでいる様子だったので、私の方から言葉をついで、) Military forces? (Aが次の forces という言葉を発したのと同時だった)

A: forces (質問を続けて) ... to Iraq?

Uh ... well ... uh ... well, (この間やはり3秒ほど。頭の中は高速回転。個人的には自衛隊そのものに反対なんだけど、そんなこと喋っていいのかどうかについて逡巡しつつ、「嘘でもいいから、ごく当たり前の回答をせよ」とかハローのホームページかどこかに書いてあったなあと思ったが、結局いざとなると普段の自分の考えていることしか出てこないもので、とっさに口をついて出てきたのは、) ... My opinion is that, uh, we Japanese shouldn't have any military forces. (AもBも「それで?」という顔つきをしているので、ちょっと軌道修正して、ごく当たり前の回答に持っていこうと思い、) But, uh, it's impossible to defend ourselves without any forces. So we need the, the Self-Defense Forces. And, the ... well ... as a ... international ... member of the international community, we must cooperate in some way or other, so sending the SDF will be ... is ... (cooperation という単語を繰り返すのではなく何か気のきいた表現を思いつこうとしたが果たせず、) would be a part of cooperation, I think.

A: I see. OK. And, uh, one more question. Uh, I'd like to know why Japanese people tend to go out to socialize rather than invite people into their homes?

Ah ... well, (1、2秒。ああ、これもハローの何かのテキストにあったぞ。「日本の家は狭いから」で攻めればよかったはずだぞ。そのあとをどう続けるか思いつかないが、ええい、取りあえず、) I think there are some reasons. ( some reasons なんて言って、1つしか思いついてないのにどうなるんだろう…) One reason is that, uh, Japanese houses are relatively small because Japan is a very small country. (たぶんAとBも納得の顔をしていたと思うが、この理由の説明をもう少し続ける必要を感じていたので…) So, uh, it's (ハローには何か「あれこれ料理を用意したりするのは大変だ」みたいなことが挙げてあったと思うが、思い出せない。どうしよう…) rather uncomfortable to invite people into one's ... at one's home. You have to prepare a lot of things. (漠然としてるなあ、けど具体的に説明する表現が思いつかないなあ。ええい、次に行こう!some reasons と言ってしまったからには、もう一つぐらい何か理由を言わなけりゃ…) And ... so ... and another reason is ... uh ... there are many restaurants and drinking places (それは日本に限らないけど、ええいままよ!) and (ここで「外なら奥さんに内緒の話もできるし」みたいなことを言って笑いを取ってやろうと思った。関西人のサガ?) we'd like to talk about, uh, business things or private things (めちゃくちゃ拙い表現、でも気のきいた表現が思いつかない) outside home. Uh, in that way, uh, your wife (my wife は変だし、our wives にしたらあとあと数の一致が難しいかな、ええい your wife で行っちゃえ) don't (あとで思えば doesn't です) hear (hear でいいのかな?listen かな?うーん。あとで思い返せば eavesdrop ぐらい言えたのに) ... don't listen to the ... the ... the privacy (やっぱりうまい表現思いつかない。嗚呼!でもここでAもBも笑ってくれた。やったー!) or secret things.

A: I see. OK. Well, that concludes my questions. (やったー!終わった!それも笑いのうちに!)

Oh, really? (満面の笑顔)

A: Thank you very much for ... (次の私の言葉と同時で何を言っていたのか不明。でもこの瞬間私にはそんなことはもうどうでもよくなっている。)

Thank you very much. Thank you.

 鞄を持ち、ドアに向かい、再びAとBの方を向いて、
(日本語で)ありがとうございました。(おじぎ。日本語はまずかったかな。でもまあいいや。よし、締めくくりはもう一度英語で、) Thank you. (ここでいかにも日本人的だけど、もう一度おじぎ。)
 退室。以上、入室してから退室まで4分40秒ほど。あっという間の、心地よいひとときだった。思わずスキップでもしそうな気分で会場を後にする私であった。

【感想】
 とにかく生来のあがり症である。心臓バクバク、頭真っ白がいつものパターンだ。4年ほど前に受けた英検1級の2次面接でもそうだった。どちらかというと引っ込み思案で、社交的とは言いがたい方なので、よく知らない人と話をする時は、極度に緊張するたちなのだ。
 逆に言えばそれさえなんとかできれば、英語の方はどうにかなるのではないかというお目でたい信念(?)から、試験開始までの30分間はひたすら緊張の緩和に努めた。これはおおいに功を奏した。
 本番はやはり文法ミスや嘘くさい発言の連発だった。ただし試験後に思い返して気づいたものがほとんどで、試験中に気づいたものはその場で言い直したので、ほとんど動揺することはなかった。これもまったく幸せなことだった。
 意見や説明の中身も、内容的には実に稚拙で薄っぺらなものばかり。もっと『300選』とかをやっておけばよかったと、試験中にも後悔していたが、それでも4秒以上沈黙が続くことなく、つっかえながらもある程度の分量を返答することができた。
 その後、ハローのホームページで受験された方々の報告を読むと、私の質問はなんと運がよかったのだろうと思います。他の方々がされた質問は、私だったらきっとシドロモドロだっただろうなと思う質問ばかりです。私の場合はたまたま何とか答えられた質問ばかりで、しかも、住所関連の土産物の質問は別にすると、実質3問で終わって、本当にラッキーだったと思います。
 と、8割ぐらい合格した気分でうきうきとこの報告書を書いている途中、ちょっと参考までにと思って上記のようにハローのメルマガの報告を読んでいると、どなたかの「我、かく戦えり」の報告に「全体的には、うまくいったと思うのだが、ここで問題は、去年も同じように思ったが…」という一節があった。頭から冷水を浴びせられたような気分になった。全体的にうまくいったと思っても、やはり落ちることは落ちるのだ。
 ああ、願わくば1次と同じく大盤振舞いで(本当にそうなのかどうかわかりませんが、私の場合はきっとそうだったと思います)、どうか受かっていますように。



 
 
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